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サイボウズの在宅勤務制度 試験導入レポート

「福利厚生だけではない合理性の観点で導入する在宅勤務制度」〜サイボウズ 人事本部長インタビュー〜 山田理 サイボウズ 取締役副社長 兼 人事本部長 兼 経営管理本部長

サイボウズでは2010年8月より、在宅勤務制度の試験導入を開始した。
今までも最長6年の育児休暇や、成果型と年功型とを選べる勤務体系など様々な人事制度を取り入れてきたサイボウズ。
なぜ今、在宅勤務制度の試験導入を開始したのか、導入に当たりどのような課題があったのか、人事本部長の山田にインタビューを行った。

−まず、今回の在宅勤務試験導入の概要について教えてください。

今回の在宅勤務制度は全従業員を対象に、月4回まで在宅勤務を認めるものです。
利用者はあらかじめ、デヂエ(※1)にて申請を行います。
ただし、各部門長には却下する権限があります。
在宅勤務制度利用に当たり、大前提となる条件は「業務効率を低下させない」こと。
業務効率が低下すると上長が判断した場合は、取得することが出来ません。

対象者 全社員
※ただし、リモートサービス(※2)接続の承認を受けている人に限る。
回数制限 月4回まで
試験運用期間 2010年10月末まで ※状況次第で延長の可能性あり
利用方法 原則前日までにデヂエへ登録し、上司の承認を得ること。
育児、介護などやむを得ない事情の場合のみ当日申請が可能。

※1 サイボウズのWebデータベース製品。フォームや表を簡単に作成できる

※2 自宅やモバイル環境から社内のグループウェアへアクセスできるサイボウズのVPNサービス。

−試験導入の目的は何でしょうか?

直接的なきっかけは、小さいお子様が熱を出した際、子供を迎えにいくために会社は早退しなくてはいけないけれど、自宅でなら働けるのに、という社員の声が挙がったことです。
その後、複数の社員へヒアリングを行い、在宅勤務導入の効果には大きく分けて次の2つがあることがわかりました。

1、就業機会の創出
子供が熱を出したときの例もそうですが、育児や介護、怪我など「働けるけど出社できない」という状況の社員に対し、就業機会を創出できると考えています。
2、業務効率の向上
通勤時間が長い場合など、オフィスに来ることにとらわれない働き方を用意することで、個人の業務効率が向上出来る場合があることを想定しています。

サイボウズの人事制度は「多くの人に長く働いてもらえること」を原則としています。
「在宅勤務」という出勤することにとらわれない働き方を用意することでより多くの人へ就業機会を提供し、かつ生産性を向上出来るのではと考えています。

−試験導入開始にあたり、どのようなことが障壁になりましたか?

主に次の5つが懸念点となりました。

  • 在宅勤務の成果を何で判断するか
  • 勤務時間や働き方を管理できるかどうか
  • コミュニケーションコストが増加しないか
  • 情報漏洩のリスク
  • 社内のモラールが低下しないか

まず、在宅勤務の成果を何で判断するかですが、これは成果物の品質で判断するしかないですよね。
もともと仕事は成果物で判断するものですが、オフィスで働いている場合は無意識にプロセスも含めて評価しているものです。
しかし、在宅勤務の場合は成果物でしか判断できません。
そのため、申請時には在宅で行う業務を記載し、上長によってそれが成果物によって業務の品質をはかることができるものかどうかをチェックするようにしています。

次に勤務時間や働き方を管理できるかどうかですが、これは現状厳密に管理することが出来ないため、上長には無条件で却下する権利を与え、信頼できる人のみに限定させています。
ただ、特に「業務効率を向上させるため」に在宅勤務を申請した社員は、通常よりも多くの成果物を出さなければ業務効率が上がったとは言えませんから、必然的にサボることはできないでしょうね(笑)。

3つめのコミュニケーションコストについては、グループウェアを使うことで、障壁を下げています。
個人間やチームでの報告、連絡、相談事項のやりとりや、必要なファイル類は、グループウェアに集約しておくことで、場所による障壁は下げられると思います。
また、Skypeなど離れた場所でもコミュニケーションを取る手段は増えているので、あまり心配はしていません。

次に情報漏洩リスクですが、これは在宅勤務以外でもモバイルアクセスには、ついて回るものですね。
現在リモートサービスは、利用する人やパソコン、場所などを審査の上、承認された人のみが利用できるようにしています。

最後のモラールの低下について、これが最大の懸念点かもしれません。
「周りもみんな取得しているし、ちょっとしんどいから在宅勤務にしよう」というような空気が流れると、会社全体のやる気や士気が低下してしまうことが想定されます。
試験導入では、回数を月4回以下に限定することである程度回避できると考えていますが、今後回数制限を解除する場合は、成果物の品質をより厳密にチェックするなど、対策が必要と考えています。

−サポート部門や営業部門など、在宅勤務を利用しづらい、または利用できない部署から不満の声は挙がっていないのでしょうか?

サポート部門については、電話対応はまだ設備が整っていませんが、メール対応についてはメールワイズ(※3)を活用することで十分検討の余地があると思っています。
すでに、そのような方法でテレワークによる顧客サポートを行っている企業もあります。

※3 サポートや企業代表のメールアカウントを複数メンバーで共有し、メール対応が行えるサイボウズのメール対応システム。

営業部門については、これまでも外出先や移動時間中にリモートサービスを使って業務を行っているので、すでにテレワークをしているとも言えます。
なので例えば、朝、子供を幼稚園に送ってから在宅勤務で提案資料を作成し、午後はお客様先に直行、というような働き方も実現可能ではないでしょうか。
その他の部署についても、在宅で出来る業務の切り分け方や周囲の協力次第で、たいていの業務に対応できると考えています。

ただ、そもそもサイボウズの在宅勤務制度はあくまで「就業機会の創出」と「業務効率の向上」を主目的としています。
在宅勤務により今まで働けなかった0が1になる、または業務効率が上がって1が2になる、そのような合理性で考えているものなのです。 福利厚生の側面もありますが、メインは合理化であることを、きちんと伝えていかないといけないと感じています。

とはいえまだ試験期間中ですから、色んなケースで在宅勤務を利用してもらい、ワークライフバランスの実現など様々な効果を検討していきたいと思っています。